シネマパパの好き勝手シネマレビュー。

日頃見た映画で「感想が書きたいもの」だけ書いています。

「ファーザー」は60代と介護の親を抱えた世代におすすめの映画でした。アンソニー・ホプキンス凄い!

 

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結局オスカー受賞!これこそリアル認知症の体験映画。

 

実は、映画を見ても内容を書いてみたくなる作品は10本に一本あるかないかなんですね〜残念ですがそんなもの?

 

2021年イギリス映画 監督・脚本:フローリアン・フリーゼル

出演:アンソニー・ホプキンス、オリビア・コールマン、ルーファス・シーウエル、いモージェン・プーツ、マーク・ゲイティス、オリヴィア・ウイリアム

 

この物語は世界中で上演された舞台の映画化でした。

話はシンプル極まりないです。

ロンドンで一人暮らしの81歳の男性が次第に認知症が進み、最後はホームに入れられてしまうと言うもの。面倒を見る娘の葛藤もありますがこの映画、それ以外に起こることは何もありません。

 

主人公のアンソニーは名優アンソニー・ホプキンス。長女役アンはやはりオスカー女優のオリヴィア・コールマン。娘として親の介護に苦悩する姿を見事に演じています。

 

一人暮らしでも、不自由さが出てきた父親に娘は介護人を依頼するが、ことごとくうまくいかない。

少々偏屈なタイプで扱いづらい老人はわがままも多くなっている。

いつまでも事故でなくなった次女の死を受け入れられず。今どこにいるんだ?会いたいなどといって実は認知は進んでいく。

ある日、家の中にみたこともない男がいた。本人は娘の夫でもう10年ここに住んでいるという。

あるいはみたこともない女性が娘と言って話しかけてくる。気づけば娘の家に引き取られていて、自宅にかけてあった亡くなった次女の絵がどこかに行った?!と騒いでしまう。

そんな混乱がだんだんと増えてくる。

 

認知といっても別に頭がぼーっとしてくるとかの自覚は全くないものですね。

至って自分は普通と思っているが、なんか周りに「変なこと」が起きてくる。

やったことをすっかり忘れている。。。ことにも気づかない。

お気に入りの腕時計も介護人が盗んだんだ、とか、時間の感覚がわからなくなってくる。急に癇癪を起こす。あるいは幼児帰りのような駄々っ子のような特有の症状も。

しかし次第にそんな自分のおかしさに気づいていく過程は、悲しく、情けなく、恐怖も感じていく。

 

映画は彼の視点で周りがおかしく見えていく。

これは今まで認知症をテーマにしたものではなかった描き方で、まるでみている本人が認知になった気分に!あれー??おかしいだろ?ほんとに??といった出来事で見ているこちらも本当に何が正しく、真実なのかもわからなくなってくる。

この描写の仕方がこの作品実に巧みなんです!

この主人公の体験はそのまま認知症なんだな、ととても理解がしやすいんですね。

ですから「認知症体験」をするために一度こうした映画を見ておくのも今後のために有益だと強く感じてしまいました。

 

ラストシーン。女性介護士に抱きかかえられて、自我の崩壊を実感していくホプキンス。

恐怖、絶望、落胆、を感じつつ、ついに理性的だった彼も幼児のような受け答えもしてしまう。それをじっくりと優しく受け止めてくれるベテランの介護士の応対。。

あの冷徹な殺人鬼の「ハンニバル・レクター」を演じたホプキンス!が本当にただのボケ老人になってしまったんじゃ?と思わせるほどの演技を見せるんですね。

さすがアカデミー主演男優賞!と最後に納得してしまいました。

 

自分の老い方や死に方など人生の終末を考える年齢になった方。

またそんな親御さんを抱えている方。

ぜひ一度ご覧になることをおすすめします。というか見ておくべき作品です!

 

万国共通の高齢化時代の普遍的テーマに共感でした!

個人的には、ラストの老人ホームのベテラン介護士役のオリヴィア・ウイリアムズが素敵でした。

⭐️⭐️⭐️⭐️4.0です。