シネマパパの好き勝手シネマレビュー。

日頃見た映画で「感想が書きたいもの」だけ書いています。

ノマドランドを見て、改めて諸行無常を感じたけれどアラフィフ以上は絶対観るべき映画!

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アメリカのネバダ州の企業城下町に住んでいたの60代の女性ファーン。

夫も癌で先立たれ、リーマンショックで会社は倒産。その街も無人化して郵便番号も地上から消えてしまう。。。子供もどうやらいない。

社宅から離れ一人キャンピングカーで寝泊り。全国を転々として季節仕事をしながら生活しています。

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象徴的だったのは「アマゾン」。大きな駐車場に皆、車を止め、住まいとして住み込み。広大な倉庫の中で集品、再送の仕事についている。

アマゾンもつい20年前は全く無名な会社。

それが大規模な配送センターを全米各地に持ち、ブラックと言われながらも彼らのような年配の「ノマド・ワーカー」の生活を支えている。

ファーンの旦那さんは確か採掘のビジネスで、一昔前まではかなりの利益を出していたことだろう。一つの街を砂漠のど真ん中に作ってしまうほどに。

だから逆にこの先20年後これらGAFAの世界が果たして続いているのだろうか?興味を感じる部分です。

そして、彼らのような境遇の人たちはコミュニティーを作って、互いを助け合って暮らしている、ほとんどが独り身の60代以上。

食べる、働く、最低限の生活費というシンプルな生活に日々を送る。

何ヶ月、何年先のことはあまり考えていない。

でも夜になればキャンプの炎を囲み、歌を歌い、互いの悩みを聞いて過ごしている。それが不幸か?といえばそうでも無い。

ホームレスと違うのは、彼らは自分で稼ぎ、プライドを持って暮らしているから。

映画の中で主人公に「ホームレスなの?」と子供が質問。それに対して「ハウスレス」なのよと答える。

一方ではアメリカン・ドリーム!アメリカでは華やかなセレブの世界や何十億円も、何百億も稼ぎ出すスポーツ選手、ミュージシャン、投資家などとはまるで別世界です。

でも日々の暮らしの中で大自然の美しさ、めぐみを実感し、小さな幸せに喜びを感じられる。

あるいは、変なストレスを抱えて眠れない夜を過ごす、なんてこととは縁がないようです。

公式予告編です

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そんな生活の中、自然や人々と触れ合ううちに、少しずつ主人公の心も解放されていきます。

誰しもがある日突然、大事なもの、人を無くして孤独になることもあり得る。

そんな時に自分だったらどう考えて人生を立て直していくのだろうか?

と、いろいろなことを自分に置き換えて、今考えるべきこと、やらなければいけないことを整理していかなければと、見事に自分ごととして没入できた作品でした。

 

フランシス・マクドーマンドのひょうひょうとした佇まいの中に見せる人生のきびを感じさせる繊細な演技はますます円熟。

でも、野外での用足シーン(これは驚きました!)や川での全裸シーンなど、体当たりで取り組む姿勢にも圧倒されます。

 

 

また何より驚いたのは今回、ほとんど俳優は使わず、出演は完全な素人たち。

マクドーマンドも実際のノマドワーカーと一緒に何ヶ月か生活をともにして、ドキュメンタリー作品の中で出る、自然な会話やせりふをベテランの役者のように彼らから引き出したクロエ・ジャオ監督の魔術です。

出演者の中には、最後までマクドーマンドが女優だと知らなかった人もいたそうで。。。ほんまかいな??

 

こんな斬新な撮影方法は残念ながら今までお目にかかったことはありません。

その「新しさ・新鮮さ」はちょっと例がないほどの才能と改めて感心。アカデミー賞を賑わしたことも納得です。

 

正直、最近のアカデミー賞は不作?続きではないかと感じていましたが、昨年のポン・ジュノ監督といい、ハリウッドが生き残りのために新しい血を求めていることも益々感じました。

最近は、主人公も人種をアフリカン、プエルトリコ、インド、メキシカンなどあえて様々に登用。ジェンダーレス・差別の撤廃の流れにもしっかりと乗っているようです。

 

お得意のコミックの正義のヒーローモノの連発でなんとか息を吹き返したハリウッド映画が、今後どれほど世界にも門戸を広げていくのかと感慨も覚えた作品でした。

 

したたかなハリウッド映画界の巻き返しの力を感じる昨今ですね。

今、コロナ禍で、様々なことを考え、自分と向き合っているひとに、少し何か生きるヒントや勇気を与えてくれる意味でおすすめです。

久しぶりに「映画の力」を思い出させてくれる、感じさせてくれる作品に出会いました。

特に50歳以上は必見だと思いますね。

オススメ度は⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️五つ星満点です!

 

特別映像ヴァンガード編です。

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撮影も素晴らしかったですね。機会があったら劇場でもぜひ。

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